アウトドアーズの海成と、ネクサスドリーマーズの築山 諒真のシングルマッチ。

私が1つの試合の生成絵を少しずつ長期間に渡って公開する企画がありまして、
その後に立板三 様から絵に合わせた小説をご提供いただいた作品になります。

一部、フィクションな内容も含まれており、ファイプロの興行やストーリーと異なる点もございます。

※絵はAI生成です。小説はAI生成ではありません。

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第七十一幕:諒真のパワー

だが諒真も負けじと大きな掌を振り抜き、強烈な掌底を海成の頬に叩き込んだ。

【諒】「はぁっ!!」

【海】「うぎぃ!!」
【海】(めちゃくちゃ痛ぇぞ、このバカ力が!!)

【実】「出ました! 築山の掌底! あの分厚い掌が頬に突き刺さる!」

【解】「単なる打撃じゃないですよ、あれは全体重を乗せています。あの衝撃、普通なら立っていられません!」

諒真の全身から放れる圧倒的なパワーの前に、海成は翻弄されるしかなかった。

掌底の圧力に耐えきれない海成は、大きく後退させられマットの上でよろけてしまう。

第七十二幕:諒真の怒り

しゃがみ込んだものの、海成は意地で立ち上がり、得意の瞬発力で跳躍したが——

【海】「ぐっ……イッテェーな……! でも倒れねぇぜ!」

実に海成らしい言葉だった。しかし残念ながら、彼の肉体はその気概に追いついていなかった。

脚に力が入らず、海成はついにマットの上へと崩れ落ちる。

【海】「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
【海】(チクショー、スタミナの回復が遅ぇ……。だが、リョーマは待ってくれそうにねぇしな……)

仁王立ちで海成を見下ろす諒真は、次の出方をじっと窺っている。
正直、もう少し時間を稼いで回復したいところだが、悠長に構えていれば諒真の怒りが増すだけだ。

試合が後半に進むにつれ、諒真の切れ味は鋭さを増し、手加減する様子はない。

【実】「海成、まだ立ち上がれるか!? 諒真の表情が尋常じゃないぞ!」

【解】「諒真はここに来てどんどんギアを上げています。消耗した相手に容赦なく畳み掛けるタイプですね」

【観】「頑張れ海成ー!」
【観】「リョーマ、やめろー!!」

試合が進むごとに、諒真の“キレ”は増していく。

しかもその矛先は、海成へと向けられているように見える。

海成は、あの筋肉とパワーが取り柄の朴訥な不器用な男が、一人で何かを抱え込んでいるのではないかという思いを強めていた。

半年間の長いリハビリを耐え、デビューを果たした諒真——あのとき彼は、(五人制の混戦で)海成を倒したが、あの勝利に諒真自身が心底までは納得していなかったことを、海成は知っている。

近くにいたはずなのに、諒真が抱える思いに気づけなかった自分。

その無力さに、海成は胸が締め付けられる思いを覚えていた。

友人であり後輩である自分が、その苦悩を打ち明けられなかったことに情けなさを感じる。

【海】(この試合が終わったら、絶対問いただす――一人で抱えていたことを叱ってやる。そして、気づけなかった自分を詫びる)

そのためにも、目の前のこの一戦に勝たねばならない。

覚悟を固めた海成は、諒真を正面から見据え、再び攻勢に出る決意を固めた。

【海】(待ってろよ、リョーマ。お前のその“頑固な石頭”、俺がなんとかしてやるからな!)

第七十三幕:ヘッドバット

【海】「これでも食らいやがれ!!」

しゃがみ込んでいた海成は、意地と根性でよろめきながらも立ち上がる。

残された体力を振り絞り、瞬発力を活かして高く跳躍した。

エルボーでの勝負では諒真に勝てないと判断した海成は、咄嗟のひらめきで自らの頭を武器に変え、諒真の頭めがけて渾身のヘッドバットを叩き込む。

【海】「どうだぁっ!?」

【実】「な、なんと海成! まさかのヘッドバット!!」

【解】「あれは完全にその場のひらめきですね……! しかし頭部同士の衝突はリスクが非常に大きい。お互いに致命的なダメージを負いかねません!」

【観】「うおおおおっ!!」
【観】「ヤベェぞこれ!!」
【観】「どっちも無事じゃすまないぞ!」

会場は驚愕と悲鳴と歓声が入り混じり、嵐のような熱気に包まれた。

第七十四幕:お返し

しかし、諒真の頭はまるで岩石のように硬く、ぶつかった衝撃は逆に海成自身へと跳ね返ってきた。

【海】(……っ!! ヤベェ……頭が……くらくらする……。なんて石頭だ、こいつ……!)

朦朧とした意識の海成に対し、諒真は逆に怒りを爆発させる。

【諒】「舐めんじゃねぇぞ、海成ぃぃぃ!!」

【海】「うがぁぁぁぁぁっ!!」

次の瞬間、諒真は容赦のないヘッドバットを、正面から海成の額めがけて叩き込んだ。

重い衝撃音がリングに響き渡る。

【実】「強烈なヘッドバット!! 海成、頭を押さえて崩れ落ちたぁ!!」

【解】「これは危険です。頭部への連打は深刻なダメージにつながります。意識が飛んでいてもおかしくありませんね」

【観】「やめろー!」
【観】「うわぁぁ、海成ぃー!!」

頭に深刻なダメージを受けた海成は、抵抗する力もなく、まるで自業自得のようにマットへと崩れ落ちた。

視界が白く染まり、耳鳴りが会場の大歓声をかき消していく。

【諒】「まだ終わらないぞ……立て、海成! 僕が本気で叩き潰してやる!!」

リング上には、怒りを露わにした諒真と崩れ落ちたまま動かぬ海成という、鮮烈なコントラストが浮かび上がっていた。

第七十五幕:闘いに飲まれる

【観】「やばい! 海成が落ちた!」

【海】(まじか……やられすぎたぜ、俺……。だけどリョーマの顔、なんだアレ……もしかして…かなりキレちゃってる?)

海成は何とか体を起こそうとするが、視界は揺れ、意識は遠のきかけている。
それでも、友人の“異常”だけは本能的に感じ取っていた。

海成を見下ろす諒真の表情は、これまで見たことのないほどに険しく、怒りが露わになっている。

普段は大人しく感情をあまり表に出さない男が、だ。

【海】(もしかして……こいつ、戦いに飲まれてるのか?)

アウトドアーズの先輩であり指導役でもある横水健太から教わったことが、海成の脳裏をよぎる。
プロレスに限らず格闘技で稀に起きる現象――アドレナリンやノルアドレナリンが過剰分泌され、精神が過度に高揚して興奮状態からなかなか抜け出せなくなる選手がいるという話だ。

彼らはたとえ意識が揺らいでも、精神的な高揚が続くことで無意識に戦いを続行してしまうことがある。

海成はぼんやりとした意識の中で、諒真がその状態に陥りつつあるのではないか、と考えた。

【実】「おっと……雰囲気が変わったぞ、諒真の表情が一変した!」

【解】「興奮状態で冷静さを失うと、普段の判断が効かなくなることがあります。これは非常に危険な兆候です。」

【観】「リョーマ、落ち着けー!」
【観】「やめてくれーっ!」

そんな思考の間にも容赦はない。

諒真が力任せに海成の背中を踏みつけにかかる。踏みつけの衝撃が、すでに体力の弱った海成をさらに追い詰める。

【諒】「まだ立つのか、海成……。僕との力の差がまだ分かってないようだな。……だったらこれで終わらせてやる。自分の身の程を知れ、海成!」

諒真の声は低く、無慈悲に響いた。観客の歓声は悲鳴めいたものへと変わり、リング周りは緊張に包まれる。

海成は必死に顔を上げ、周囲に助けを求めるように視線を彷徨わせたが、返ってくるのは遠巻きの声援と諒真の冷徹な眼差しだけであった。

【実】「これは……まずい展開です! 海成、危険だ!」

【解】「選手同士の興奮や感情の高ぶりは格闘技の一部ですが、制御を失えば安全面で深刻な問題になります。レフェリーの介入が求められる局面です」

会場の空気が凍りつく中、次の瞬間に何が起きるのか――リング上のすべてがその一手に注がれていた。

第七十六幕:エスケープ

動けぬ海成の脚を掴み、諒真は力強くひねり上げて逆エビ固めに移行する。

【海】「ちょっ……うぉっ……ま、じ……やべぇぇ……!!!」

背中と腰に容赦なく圧力がかかり、海成の身体は無理やり反り上げられていく。

このままでは背骨が悲鳴を上げ、腰と背中が決定的に極められてしまう。

本来であれば、足を突っ張って相手を押し返したり、あるいは力を抜いて諒真の重心を下げさせるなど、逆エビ固めを切り返す方法はある。

だが、これまでの攻防で体力を削り取られた海成に、そんな余裕は一切残されていなかった。

残された道はただ一つ――。

腕でマットを押しながら、必死に体を引きずり、ロープへとにじり寄るしかない。

苦悶の表情を浮かべ、歯を食いしばりながらプッシュアップの要領で前進する海成。

その姿に、場内の視線が一点に集まる。

【実】「出ました! 逆エビ固め! 決まったぁぁ! 海成、絶体絶命!!」

【解】「これは強烈ですよ。腰と背中にものすごい負荷がかかっています。普通ならタップしてもおかしくありません!」

【観】「うおおおおーっ!!」
【観】「ロープ! ロープまで行けーっ!!」

逆エビ固めをかけられ、必死にロープへにじり寄る姿――。

それこそがまさしくプロレスの真骨頂。

痛みと闘志が交錯するその光景は、観客を熱狂させるに十分であった。

第七十七幕:追い込まれた海成

必死にロープを掴み、諒真の逆エビ固めから逃れた海成。

しかし、その身体はもはや限界に近く、立ち上がった姿はフラフラで、今にも崩れ落ちそうだ。

【海】「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
【海】(ヤバい……マジで回復しねぇ……足が……重い……)

リングサイドからセコンドの声が飛ぶ。

【諒】「さぁ立て! まだ勝負はついてないぞ、海成!!」

しかし、息を荒げながら立ち上がる海成の様子は、明らかに満身創痍。

そこへ、諒真が容赦なく歩み寄る。

今までの仕返しとばかりに、諒真は海成の髪と顎を無理やり掴み上げ、そのまま強引に立たせた。

【実】「おっと! 諒真が立たせた! まだ試合は続いている!」

【解】「しかし海成の体力はもはや限界……。ロープに逃げられはしましたが、消耗は激しい。次の一撃が勝敗を分けるでしょう」

観客席からは息を呑むような緊張感が漂い、誰もが次の瞬間を見逃すまいと目を凝らしている。

【観】「海成ー! 負けるなー!!」
【観】「諒真! 決めろーっ!!」

両者の運命を分ける一瞬が、静かに、しかし確実に迫っていた。

第七十八幕:追い込む諒真

【諒】「このっ…………!!!」

【海】「うおぁ!!!」

無理やり立たせた海成に対し、諒真は無傷の左肩で渾身のショルダータックルを叩き込む。

すでに海成の体力は限界に近く、自力で起き上がることすらままならない。諒真の左肩から伝わる強烈な衝撃に、海成は耐え切れず再びマットに倒れ込んだ。

【実】「おっと――諒真、強烈なショルダータックル! 海成、持ちこたえられるか!?」

【解】「いい角度で入ってます。無傷の肩で叩き込む一撃は、消耗した相手に致命的に効きますよ。」

【観】「うぉーっ!」
【観】「決まったか!?」

海成を体力・技量のすべての面で圧倒する諒真。勝利は目前に見えていた。

【諒】(あと少し……あと少しだ。僕は、海成を越えられる!)

諒真の胸には、これまでの屈辱と決意が渦巻いている。

デビュー戦で一度、確かに海成を倒したことはある。

流血させるほどの結果を残し、表面的には華々しい勝利に見えた。

だが諒真自身は、あのときの勝利が真に自分の力で得たものだとは信じていなかった。

あの試合は一対一ではなく、五人で行われる勝ち抜きのバトルロイヤル形式だった。

他の三人が入り乱れる混戦の中で、海成が別の相手に気を取られている隙を突いて攻撃し、偶然に乗じた勝利だったと評されれば反論の余地はない。

しかし今回の舞台は違う。

完全な一対一の無制限試合。誰の助けも偶然も介在しない。

ここで完膚なきまでに海成を叩きのめし、真の意味での勝利を得る――それが諒真の望みだ。

半年前の怪我でデビューを遅らせ、海成に先を越されたときの忸怩たる思い。その重さから逃れるには、ただ一つ。今日、ここで全力を出し切り、海成を屈服させるしかない。

諒真はマットに倒れ、苦しげに息を整える海成を見下ろしながら、その瞬間が近づいていることを確信した。

胸に去来するのは緊張と覚悟、そして覚悟に伴う冷たい高揚感であった。

【実】「築山――今こそ畳み掛けるか! この一撃で勝負を決めにいくのか!」

【解】「一対一の真剣勝負。築山にとっては“どちらかが上かを決める”絶好の機会です。ここでのプレッシャーは相当なものですね。」

【観】「がんばれ海成ー!」
【観】「諒真、行けーっ!」

会場の喧騒とともに、試合の行方は次の瞬間に委ねられる――。

第七十九幕:反撃のドロップキック

【諒】「ふうっ…ふうっ…」
【諒】(これで……僕の勝ちは決まる)

荒い息をつきながら、自分のタックルでマットに沈めた海成を見下ろす諒真。

ここまで来れば、さすがに相手に立ち上がる気力は残っていないだろう──諒真はそう確信していた。

だが、勝利を確信し、ゆっくりと海成に近づいたその刹那、試合は再び動いた。

完全にダウンしているように見えた海成が、突然体を起こし、勢いよくその場でジャンプしたのだ。

次の瞬間、諒真の首筋めがけて、豪快なドロップキックが炸裂する。

【海】「俺をなめんじゃねぇって、いつもいってんだろうがよ!!」

【諒】「ばっ……うぐぅ!?」

油断していた諒真は、まともにドロップキックを受けて吹き飛ばされる。会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

【実】「な、なんと! 海成、ここでまさかのドロップキック!!」

【解】「驚異的な集中力です。スタミナは限界でも、ここぞという一発の見せ方は海成の強みですね!」

【観】「うおおおおーーっ!!」
【観】「どっからその体力が出てきた!?」

マットに叩きつけられながらも、諒真は海成の気合と根性を認めざるを得なかった。

【諒】(さすがだ、海成……ここでドロップキックを放つとは! あの根性、やはり…侮れないな)

キックの衝撃で互いに弾き飛ばされ、二人は再びマットへと倒れ込む。場内には興奮と息を呑む静けさが混在する。

【海】(お前だけ、一人先にいかせるような真似はしねぇよ……! 必ず、俺も追いついてやる!!)

海成の瞳には決意が灯る。

両者ともにボロボロだが、試合はまだ終わっていない──。観客の声援が、次の瞬間へと二人を急き立てる。

第八十幕:力尽きて

【海】「……」

【諒】「……」

マットに横たわったまま、二人はピクリとも動かない。

海成も諒真も、完全に力を使い果たしていた。

【海】(体が……動かねぇ……)

海成の意識は朦朧としていた。

全身が鉛のように重い。

指一本、動かすことができない。

【海】(ここまでなのか……? 俺は……ここまでなのか……?)

【諒】(立たなきゃ……でも……力が…入らない……)

諒真も同じだった。

立ち上がろうとする。

だが、体が言うことを聞かない。

【諒】(海成……君は……まだ立てるのか……?)

すでにスタミナも体力も限界を超えていた。

ここまで続けてこられたのは、アドレナリンとノルアドレナリンの大量分泌によって無理やり肉体を覚醒させていたからにすぎない。

だが、その化学反応すらも今は尽きていた。

二人は立ち上がるどころか、体を動かすことさえ困難な状態だった。

レフェリーが二人の動きを確認し、ダブルのダウンカウントを始める。

【実】「ダブルダウン!! レフェリーがカウントを取ります!!」

ワン……。

会場が静まり返る。

ツー……。

レフェリーの声だけが、リング上に響き渡る。

【観】「……」
【観】「立て……」
【観】「頼む……立ち上がってくれ……」

観客も、そして実況・解説までもが息をひそめ、リング上を凝視していた。

スリー……。

【解】「これは……どちらも完全に力を出し切っていますね。立ち上がれるかどうかは、ほんの紙一重の差でしょう」

【海】(立たなきゃ……な。こんなところで、終われねぇ……)

海成の心の中では、まだ闘志が燃えていた。

だが、体がまったく動かない。

【海】(リョーマ……お前との戦い……まだ終わらせたくねぇ……)

海成の脳裏に、これまでの思い出が蘇る。

ネクドリに入団する前、弱かった諒真。

だが、諦めずにトレーニングを続けた諒真。

そして今――強くなり、選手としてデビューした諒真。

【海】(お前は……俺が見守ってきた奴だ……だから……)

【諒】(僕は……まだ……)

諒真も同じだった。

こんなところで諦めたくない。

でも、力が入らない。

【諒】(海成……君は僕の目標だった……憧れだった……)

諒真の脳裏にも、思い出が蘇る。

何度も助けてくれた海成。

何度も励ましてくれた海成。

【諒】(だから……ここで終わりたくない……君に、僕の成長を見せたい……!)

フォー……。

【観】「頼む、立ち上がってくれ……!」
【観】「このまま終わるな、最後まで見せてくれ!」
【観】「海成ーーっ!!」
【観】「諒真ーーっ!!」

観客席から、祈るような声援が飛ぶ。

誰もが、二人の姿に心を打たれていた。

もう勝ち負けではない――二人の魂のぶつかり合いを、見届けたかった。

ファイブ……。

【海】(立て……俺……! 立ち上がれ……!)

【諒】(動け……僕の体……! まだ終わっちゃいけない……!)

誰もが固唾をのんで見守る中、先に立ち上がるのは果たしてどちらなのか――。

死闘の行方を決するカウントは、刻一刻と進んでいく。

海成と諒真。

二人の物語が――今、終わろうとしていた。

いや――まだ、終わらない。

二人の想いが、まだ燃えている限り――。