アウトドアーズの海成と、ネクサスドリーマーズの築山 諒真のシングルマッチ。
私が1つの試合の生成絵を少しずつ長期間に渡って公開する企画がありまして、
その後に立板三 様から絵に合わせた小説をご提供いただいた作品になります。
一部、フィクションな内容も含まれており、ファイプロの興行やストーリーと異なる点もございます。
※絵はAI生成です。小説はAI生成ではありません。
第十一幕:ダメージ
観客席が一気に沸き立つ。
誰もが立ち上がり、拳を振り上げていた。
【実】「これは大技だァーーッ! 築山の締め技も驚きの威力でしたが、この放り投げはさらに凄まじいィィーーッ!!」
【解】「新人にしてこれだけの力を見せられるとは……。築山、ここで試合の流れを完全に引き寄せました」
海成はマットに叩きつけられ、背中から激しく落下した。

ゴンッ!
鈍い音が響く。
【海】「ぐあぁっ……!」
息が詰まる。
肺の空気が一気に押し出された。
【海】(めちゃくちゃ痛ぇ……! クソ……っ!)
視界がぐらりと揺れる。天井の照明がぼやけて見える。
頭の中で何かが鳴っているような気がした。
海成は必死に息を整えようとするが、体が思うように動かない。
一方、諒真もまた荒い息を吐きながら膝をついていた。
【諒】「はぁ……はぁ……」
汗が顎から滴り落ちる。
全身が熱い。
心臓が激しく脈打っている。
【諒】(やった……か?)
いや、まだだ。
まだ試合は終わっていない。
諒真は拳を握りしめ、倒れた海成を見つめた。
【諒】(この程度で倒せる海成じゃない……!)
海成の指がわずかに動いた。
ピクリと。
【実】「おおっと! 海成、まだ意識があるようです! 起き上がれるか!?」
観客たちが息を呑む。
【観】「立て! 海成!」
【観】「まだ終わってないぞ!」
海成はゆっくりと腕に力を込め、マットを押した。
【海】(まだ……終われねぇ……!)
体中が悲鳴を上げている。
だが、ここで倒れるわけにはいかない。
第十二幕:諒真の決意
リング上で、海成が苦痛に呻いた。

【海】「うげぇっ!!」
【海】(くそっ……! 投げられた……!)
海成の視界が一瞬白く染まる。息が詰まる。後頭部に走る痛み。
【海】(なんて力だ……諒真のやつ、本気で来やがった!)
――後頭部は人体の中でも血管が集中する場所。
ここを狙う投げ技は、命に関わるほど危険だ。
長年、受け身の訓練を積んだレスラーだけが受けられる技である。
【実】「うわあああっ!! 海成、完全にマットに叩きつけられましたァ!!」
【解】「これは……相当な衝撃です。投げ技というのは、受ける側の技術が試されるんですよ。海成は訓練を積んでいますが、それでも痛い。本当に痛い」
会場がどよめく。観客席から悲鳴にも似た歓声が上がった。
【観】「おおおっ!! 築山すげぇ!!」
【観】「海成、立てるのか!? あんなの受けきれないだろ!」
【観】「怪力すぎる……! やばいって!」
マットに這いつくばる海成。息を整えようとするが、うまく吸えない。
【海】(まずい……体が動かない……)
その姿を見下ろす諒真。彼の表情には、一切の迷いがなかった。
【諒】(……海成、これぐらいで終わらないよね)
諒真の拳が、ゆっくりと握られる。
【諒】(君との決着は今日、ここでつける)
諒真の脳裏に、ある記憶がよぎる。
――二年前。
ネクドリに入団し練習生となった時、海成と交わした約束。
二人が正式に選手になったら、試合しようぜ。
【諒】(あの時の約束は果たされた……。あとは僕が勝つだけだ)
その日に備え、諒真は鍛え上げた。
誰よりも厳しい練習に耐え、ここまで這い上がってきた。
そして今日、この日を迎えたのだ
【諒】(今日こそ、証明する。僕は海成に勝つ)
【実】「築山、さらに攻めに出るか!? この流れ、完全に築山ペースです!!」
【解】「海成、立ち上がれるでしょうか……! ここが勝負の分かれ目ですよ!」
諒真が一歩、海成へと近づく。
第十三幕:海成の悲鳴
マットに叩きつけられた海成の体が、まるでゴムボールのように跳ねる。

【海】「ああああああああ!!」
痛みが背中から全身に走る。歯を食いしばり、顔をゆがませながら、海成はマットの上を転がった。
【海】(馬鹿野郎……! リョーマの奴、スイングに続いてこんな大技まで……!)
息が荒い。
肺が悲鳴を上げている。
それでも、海成は両手をマットについた。立たなければ。ここで終わるわけにはいかない。
リング上では、諒真が仁王立ちしていた。
【諒】「どうした海成! さっさと立て!」
諒真の声が会場に響く。
【諒】「お前なんか、僕の先輩になれないってこと……身をもって教えてやる!」
強気な言葉とは裏腹に、諒真の胸には小さな不安がよぎっていた。
【諒】(……海成、大丈夫かな? 僕、ちょっとやりすぎたかも……)
倒れたままの海成を見下ろしながら、諒真は拳を握りしめる。
闘志と心配が入り混じった、複雑な表情だった。
マットに手をついた海成が、ゆっくりと体を起こし始める。
【海】「うううううううっ!!」
全身が悲鳴を上げている。
それでも、膝をつき、片手を上げ、立ち上がろうとする海成。
【海】(当たり前だろバカ! お前の怪力は本当にシャレになんねぇんだよ……!)
心の中で毒づきながらも、海成は諦めない。
半年といえど先輩として、ここで倒れるわけにはいかなかった。
実況席では、マイクを握ったアナウンサーが絶叫する。
【実】「うわぁっ! 築山、畳みかけるような攻撃だ! 海成、かなり追い込まれています!」
隣の解説者が冷静に分析を加える。
【解】「ここまで来ると、試合は技術だけじゃなく精神力の勝負ですね。築山選手のパワーは明らかに海成を揺さぶっています」
客席からは、割れんばかりの声援が飛ぶ。
【観】「おおおっ! リョーマ、そのまま行け!」
【観】「海成! 負けんなぁー!」
【観】「二人とも命がけだ!」
会場全体が熱気に包まれていた。
誰もが息を呑み、次の瞬間を見逃すまいと目を凝らしている。
第十四幕:海成復帰
諒真は拳を振り上げ、観客に向かって吠えた。
【諒】「これが僕の力だ!」
声は自信に満ちている。だが、汗が頬を伝う。
【諒】(やばい……さっきのは完全にミスった……)
諒真の胸の内は焦りでいっぱいだった。
海成に当てるはずの技が、ほんの少しズレた。
あれで怪我をさせていたら——。
一方、マットに沈む海成の脳裏には、デビュー前の練習風景が浮かぶ。

【海】(ここで終わるわけにはいかねぇ……)
アウトドアーズの先輩たちの厳しい指導。
何度も何度も受け身の練習をした日々。
すべては、この瞬間のために。
【海】「くそっ……!」
海成は歯を食いしばり、腕に力を込める。
観客席がざわめく。立ち上がろうとする海成の姿に、会場全体が息を呑んだ。
【実】「立った! 海成、まだ立ち上がります!」
【解】「すごい根性だ……新人とは思えない!」
【観】「海成ーっ! 負けるなーっ!」
【観】「リョーマ! もう一発だ!」
声援が交錯する。
応援する選手は違っても、観客たちの熱気は一つになっていた。
諒真は海成と目を合わせる。
その視線の中に、言葉はない。だが、二人には分かっていた。
【諒】(次、行くよ)
【海】(来いよ……受けて立ってやらぁ!)
プロレスラーとしての本能。
それは、どんな言葉よりも確実に相手に伝わる。
【諒】「まだ来るか、海成!」
【海】「当たり前だぜ……俺はまだ終わっちゃいねえ!」
リング上で、二人は再び構える。
【実】「これはすごい! 新人戦の枠を超えた激闘です!」
【解】「多少のミスはありましたが、それすらドラマに変えてしまった……。観客の心を完全につかんでいますね」
【観】「どっちも負けるなーっ!」
【観】「もっと見せてくれーっ!」
会場は総立ち。拍手と歓声が渦を巻く。
リングサイドの照明が、汗まみれの二人を照らし出す。
海成は肩で息をしながら、諒真を睨む。
【海】(ここまで来たら、もう後には引けねぇ……!)
諒真も構えを崩さず、海成を見据える。
【諒】(僕だって……絶対に負けられない……!)
二人の間に、見えない火花が散る。
新人同士の戦い。
だが、そこには確かなプライドがあった。
【実】「両者、再び激突の構え! ここからが本当の勝負だーっ!」
【解】「新人戦という舞台で、ここまでの戦いを見せるとは……」
観客の視線が、リングに釘付けになる。
誰もが次の瞬間を待っている。
第十五幕:リング上の激闘
【海】「く、クソが……!」
海成がようやく四つん這いから立ち上がる。膝が震えている。
体が重い。
その瞬間——諒真が駆け寄り、海成の体をガッチリと掴んだ。
【実】「おおっと! 築山が素早く反応したァーッ! 海成を捕らえましたァ!」
【解】「攻撃の流れを断ち切る判断ですね。ここで主導権を握りたい築山の狙いが見えます」
【諒】「……まだ、終わってない!」
諒真の頭の中には、デビュー前の厳しい練習が蘇る。
何度も何度も投げられた日々。
今度は自分が投げる番だ。
全身に力を込め、海成の体を持ち上げる。
そして、コーナーへ向かって全力で振り飛ばした。
【海】「うわっ……!」
ドガァン!
海成の背中がコーナーポストに激しく叩きつけられる。
鈍く重い衝撃音がリング全体に響き渡った。
【観】「おおおおっ!」
【観】「すげぇ音したぞ!」
【観】「海成、大丈夫か!?」
海成の視界がぐらりと揺れる。
背中全体に鈍い痛みが走った。
【海】(……痛ェ。でも、ここで倒れるわけには……!)
それでも海成は歯を食いしばり、コーナーにもたれたまま諒真を睨みつける。
【諒】「ここからだ……!」
諒真は一瞬の迷いもなく、海成の胸元へ向かって踏み込んだ。
そして、右手を振り上げる。
バシィィン!
鋭いチョップが海成の胸板に突き刺さる。

【実】「チョップだァーッ! 築山の強烈な一撃が海成の胸に炸裂しましたァ!」
【観】「うおおおおっ!!」
バシィン!
もう一発。
バシィン!
さらにもう一発。
【海】「ぐっ……!」
三発目のチョップで、海成の顔が苦痛に歪む。
胸が焼けるように痛い。
呼吸が苦しい。
【海】(……やべぇ……このままじゃ……)
【解】「築山はパワー型らしい連続チョップで攻めています。確実にダメージが入っていますね」
リングサイドの解説者は冷静に続ける。
【解】「ただし……これは諸刃の剣です。全力で打ち込むチョップは、打つ側の体力も大きく削ります。築山選手はまだ新人選手。試合経験がまだ浅い。ペース配分ができていないように見えますね」
その言葉通り、諒真の息も荒くなり始めていた。
【諒】(……きつい。でも、今攻めなきゃ勝てない……!)
諦めたくない。
負けたくない。
ここまで必死に練習してきた日々を無駄にしたくない。
諒真はもう一度、拳を握りしめる。
【観】「築山、まだいけるのか!?」
【観】「海成も反撃しろよ!」
【観】「どっちも頑張れーっ!」
場内は歓声と緊張感で包まれている。
両者ともに息を荒げ汗だくになりながらも、どちらも引かない。
【実】「両者譲らないィ! これぞ新人戦の醍醐味ですッ! 熱い攻防が続いています!」
第十六幕:激突
諒真の攻撃の手が一瞬ゆるんだ。
その瞬間を、海成は見逃さなかった。
【海】「……いてぇっつってんだろうが!」
怒りを乗せた声が会場に響く。
【海】「好き勝手撃ち込んでくるんじゃねぇよ、このバカ力!」
【海】(クソッ……さっきから一方的に撃たれっぱなしか! ここで反撃しなきゃ、俺が俺じゃなくなる!)
心の底から湧き上がる怒り。
それは痛みに対する本能的な反応であり、同時にプロレスラーとしての誇りでもあった。
海成の左手が、鋭く伸びた。
バシィィィンッ!
強烈な張り手が、諒真の顔面に直撃する。

【実】「きたああああっ! 海成が反撃だァァァ!」
【実】「強烈な張り手ィィィ! 築山の攻撃の流れを完全に断ち切ったぞォォォ!」
【解】「これですよ! 張り手は相手の意識とバランスを一気に崩せる。しかも海成のこれは威力が段違いだ」
【諒】「おぶっ!」
頬を強打された諒真の顔が、衝撃で大きく歪む。
肉が波打ち、身体が後ろへとよろめいた。
【観】「うおおおっ! 今の張り手、ヤベェ!」
【観】「築山の顔、完全に歪んでる!」
【観】「音がすごかった! 会場中に響いたぞ!」
諒真の視界が一瞬、真っ白になる。
頬が焼けるように痛い。
耳が キーン と鳴っている。
【諒】(くっ……やはり甘くないな、海成……!)
目の前が揺れる。身体がふらつく。
だが──諒真の目には、すぐに強い光が灯った。
【諒】(こんなところで止まるか……! 僕は、まだ終わらない!)
決して後退して終わらない。
その強い意志が、諒真の身体を再び前へと動かす。
【海】(来い、諒真……! お前の本気を見せてみろ!)
海成もまた、構えを取り直す。
痛みに耐えながらも、その目には闘志が燃えていた。
【解】「互いに一歩も譲らない! これぞプロレスの真髄です!」
【実】「観客の興奮も最高潮ォォォ! 二人の闘い、さらに加速していくぞォォォ!」
会場全体が熱気に包まれる。
【観】「リョーマァァァ! 負けるなァァァ!」
【観】「海成ィィィ! 行けぇぇぇ!!」
歓声が、怒号が、拍手が──すべてが渾然一体となって、リング上の二人を包み込んでいく。
この瞬間、会場にいる全員が、この闘いの虜になっていた。
第十七幕:リング上の友情
その一瞬のチャンスを見逃さなかった。
海成はコーナーから素早く体を起こし、前へ飛び出す。
【海】(今しかねぇ……!)
痛む体を無視して、海成は諒真の右腕をつかんだ。
負傷している方の腕だ。でも、握る力は優しかった。
【海】(ごめん……でも、これしかないんだ)
ぐっと肩を押さえて、海成は諒真をロープへと振る。
力は強く、でも手首のひねり方は丁寧に。

【実】「きたああぁっ! 海成、反撃だ! 築山をロープへ振ったぁ!」
諒真の体が勢いよくロープへ向かって走る。
【観】「おおおおっ!」
【観】「海成、いけーっ!」
【観】「リョーマ、負けんなー!!」
会場が一気に沸き立つ。観客には激しい攻防に見える。でも——。
【海】(痛くないように……絶対に、これ以上ひどくならないように……)
海成の心は試合よりも、目の前の友人のことでいっぱいだった。
一方、ロープへと飛ばされた諒真も、その優しさに気づいていた。
【諒】(……海成)
振られる瞬間、いつもと違う力の入れ方を感じた。
腕が痛まない角度。肩への負担を減らす手の当て方。
【諒】(君、わざと……)
胸が熱くなる。
こんな状況でも、海成は自分のことを考えてくれている。
【諒】(だったら僕も……ちゃんと応えないと!)
ロープに背中が当たる。反動で体が前へ押し戻される。
【実】「築山、ロープから跳ね返ったぁ! ここから海成、どう迎え撃つ!?」
【解】「両者の表情を見てください。激しさの中に、何か……信頼のようなものを感じませんか?」
【観】「なんだこれ……泣けてきた!」
【観】「二人とも頑張れー!!」
リングの上で交錯する、二つの想い。
観客には見えない、選手同士だけが分かち合う絆。
【実】「これぞプロレス! ただの殴り合いじゃない! そこには心と心のぶつかり合いがあるんです!」
【解】「表面は激しい戦い。でもその裏側に、相手への思いやりがある。それが本物の真剣勝負なんですよ」
海成は構えを取る。
走ってくる諒真を見つめながら、次の動きを考えた。
【海】(来い、諒真……! お前の全部、受け止めてやる!)
諒真もまた、走りながら海成を見つめていた。
【諒】(海成……お前の優しさ、無駄にはしない……!)
二人の距離が、ぐんぐん縮まっていく——。
第十八幕:ジャンプキック炸裂
ロープに振られた諒真の体が反動で戻ってくる。
その一瞬を、海成は見逃さなかった。
【海】(今だ……!)
海成は一度後ろへ下がり、助走をつける。
そして——鋭く駆け出した。
マットを蹴り、宙へ跳ぶ。
両足が弧を描く。狙いは一つ。諒真の顔面だ。

ドンッ!
【実】「きたァァァ! 海成、ジャンピングキック! 築山の顔面に直撃だァーッ!」
【解】「角度、タイミング、威力……全てが完璧です! これが新人選手同士の試合とは思えませんね!」
【諒】「ぐあっ……!」
諒真の顔が衝撃で弾かれる。
体がぐらつき、そのままマットに倒れ込んだ。
大の字になって沈む。
【諒】(海成……二度も顔に蹴りを……! こんな無茶なことまで……!)
場内がどよめく。
【観】「うおおおおォ! 顔面だ! 顔面直撃!」
【観】「あれは効いたぞ!」
【観】「立てるのか!? 築山!」
海成は倒れた諒真を見下ろす。
そして——腕を大きく広げた。
【海】「どうだ、ムッツリ野郎! 俺の力、思い知ったか!」
叫びながらも、海成の胸の奥には複雑な感情がうずまいていた。
【海】(リョーマ……お前を倒さなきゃ、俺は前に進めない)
友人だからこそ、容赦できない。
友人だからこそ、本気でぶつからなければ意味がない。
【実】「海成、完全に築山を捕らえましたァ! 会場が揺れています!」
【解】「友人同士の対決……しかし、リングの上では真剣勝負です。この緊迫感、素晴らしいですね」
マットに倒れた諒真の目が、わずかに見開かれる。
【諒】(まだだ……まだ終われない……!)
かつて二人で誓った夢。
プロレスラーとして頂点に立つこと。
その夢は、まだ始まったばかりだ。
【観】「おおおおおォォォ!」
観客の声援が、リング全体を包み込む。
【実】「互いの意地とプライドがぶつかり合っている! これぞプロレスだァーッ!」
【解】「新人戦でこのレベルの攻防……これは将来が楽しみですね」
海成は拳を握りしめた。
勝負はまだ、終わっていない。
そして諒真も——まだ、立ち上がろうとしている。
二人の戦いは、さらに激しさを増していく。
第十九幕:海成の飛行技
リングの上で、海成は荒く息を吐いた。
汗が額から滴り落ちる。体は重い。
だが、ここで止まるわけにはいかない。
【海】(リョーマ……このくらいじゃ終わらねぇよな?)
倒れている諒真を見下ろしながら、海成は叫んだ。
【海】「おい、リョーマ! 寝てんじゃねぇぞ! まだ始まったばかりだろうが!」
声を張り上げる。
自分にも言い聞かせるように。
【諒】「う……うぅ……」
諒真はマットの上でうめき声を上げている。
すぐに動きだす気配はない。
【海】(よし……今だ!)
海成は素早くコーナーポストへ走った。
ロープを掴み、一気に駆け上がる。

【実】「きたァァァ! 海成がコーナーに登ったァ! これは……大技の予兆かァ!?」
実況の声が会場に響き渡る。
【解】「序盤からかなり積極的ですね。海成、先輩としての意地を見せにきています」
観客席がどよめいた。
【観】「おおおっ! 何が来る!?」
【観】「いけぇぇー! 海成ーッ!」
コーナーポストの上。
海成は会場全体を見渡した。無数の視線が自分に注がれている。
【海】(ここで決める……リョーマにだけは、負けられねぇ)
胸の奥で、何かが燃えた。
かつて自分を追い抜いていった後輩。
才能に溢れた男。
いつも冷静で、どこか遠い目をしていた諒真。
そんな奴に、今日は絶対に勝つ。
【海】「これで決めてやる……リョーマ、お前にだけは負けられねぇんだよ!」
両腕を大きく広げる。
観客席から歓声が爆発した。
【観】「うおおおおおっ!」
【観】「魅せてくれ海成ーッ!」
会場の熱気が、リング全体を包み込む。
一方、マットに倒れたままの諒真。
彼の意識はまだ朦朧としていた。
【諒】(……くそ、体が……動かない)
視界がぼやける。耳には観客の声が遠くに聞こえる。
そして——海成の声も。
【諒】(海成……まだ、そんなに必死なのか)
諒真の中で、小さな罪悪感が渦巻いた。
どれだけ自分が勝っても、海成はいつも真正面から向かってきた。
諦めなかった。
【諒】(……だから、僕も……)
諒真の指先が、かすかに動いた。
【実】「さあ海成、完全に体勢を整えたァ! 会場のボルテージは最高潮だァァッ!」
【解】「観客の心を完全に掴みましたね。このタイミングで大技を決めれば、試合の流れは一気に海成のものになります」
海成の目が、鋭く光る。
呼吸を整えた。膝を曲げた。
【海】(いくぞ……!)
第二十幕:そして跳んだ
リング上で、海成は荒く息をついていた。
汗が額を伝い、視界が滲む。それでも目の前のライバル──諒真から視線を外すことはできない。
【海】(くそ……リョーマが初戦で見せやがった、あの技……)
海成の脳裏に、諒真のデビュー戦の光景が蘇る。
コーナーから飛び降り、相手を叩き潰した豪快なダイビングアタック。

会場が揺れた。観客が沸いた。
そして──自分の影が薄くなった。
【海】(俺は……このままじゃ終われねぇ)
胸の奥で、何かが燃え上がる。
それは嫉妬でも焦りでもない。
純粋な、プロレスラーとしての意地だった。
【海】「先輩として……見せてやるぜ」
海成は、倒れている諒真を見据えた。
諒真が仰向けに倒れたまま、胸を上下させている。
狙うは、あの胸板だ。